「Microsoft 365を導入したけれど、セキュリティ設定は初期状態のままで大丈夫だろうか?」
「どこまで対策すれば安全と言えるのか、基準が分からない」
クラウドサービスの導入において、セキュリティは最大の懸念事項です。Microsoft 365は非常に堅牢な基盤を持っていますが、「テナントの設定(鍵の管理)」はユーザー自身の責任で行う必要があります。初期設定のままでは、IDとパスワードさえあれば世界中どこからでもアクセスできてしまうため、不正アクセスの格好の的になりかねません。
この記事では、Microsoft 365を導入した企業が「これだけは絶対にやっておくべき」4つのセキュリティ対策と、その具体的な設定手順を解説します。
対策1:多要素認証(MFA)の全社適用
【なぜ必要なのか?】
IDとパスワードだけの認証は、もはや安全ではありません。フィッシング詐欺やパスワードリスト攻撃により、パスワードは容易に盗まれる可能性があります。多要素認証(MFA)を有効にし、スマートフォンのアプリなどで本人確認を行うことで、パスワードが漏洩しても不正アクセスを99.9%防ぐことができます。
【設定手順】
最も簡単な方法は、「セキュリティの既定値群」を有効にすることです。
Microsoft Entra管理センター(旧Azure AD管理センター)に、全体管理者アカウントでサインインします。

「Entra ID」>「概要」>「プロパティ」を選択します。

ページ下部の「セキュリティの既定値群の管理」リンクをクリックします。

「セキュリティの既定値群の有効化」を「はい(有効)」にし、「保存」をクリックします。

これにより、全ユーザーに対してMFA登録が必須化されます。
対策2:監査ログの有効化
【なぜ必要なのか?】
「いつ、誰が、どのファイルにアクセスしたか」「管理者がどんな設定変更をしたか」という記録(ログ)は、万が一のトラブル時に原因を究明するための「防犯カメラ」の映像のようなものです。しかし、初期設定では無効になっている場合があるため、必ず確認が必要です。
【設定手順】
Microsoft Purview コンプライアンス ポータルにサインインします。

左側メニューから「ソリューション」>「監査」を選択します。

画面上部に「ユーザーと管理者のアクティビティの記録を開始する」というバナーが表示されていたら、クリックして有効化します。

対策3:外部共有設定の制限(SharePoint / OneDrive)
【なぜ必要なのか?】
SharePointやOneDriveは社外とのファイル共有に便利ですが、初期設定では「誰でもアクセスできるリンク(匿名リンク)」が作成可能な場合があります。これを放置すると、意図せず機密情報がインターネット上に公開されてしまうリスクがあります。
【設定手順】
SharePoint 管理センターにサインインします。

「ポリシー」>「共有」を選択します。

「外部共有」のスライダーを調整します。推奨設定は、SharePointとOneDriveともに「新規および既存のゲスト」(招待した人のみアクセス可)または「既存のゲスト」です。

もし「すべてのユーザー」で設定する場合は、「ファイルとフォルダーのリンク」セクションで、リンクの有効期限(例:30日)を設定することをお勧めします。

対策4:管理者アカウントの保護と最小化
【なぜ必要なのか?】
「全体管理者」は、テナント内のすべてを操作できる最強の権限です。このアカウントが乗っ取られることは、会社の全データを失うことと同義です。管理者を必要最小限に絞り、通常業務には使用しないことが鉄則です。
【運用ルール】
- 人数の制限:
全体管理者は2〜4名程度(主担当とバックアップ)に留める。 - 専用アカウントの利用:
管理者自身の「普段使いのアカウント(メールやTeams用)」に全体管理者権限を付与せず、管理作業専用のアカウント(例:admin-sakai@...)を別途作成して使い分ける。
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Microsoft 365のセキュリティに関するよくある質問(FAQ)
- Qセキュリティ対策をすると、使い勝手が悪くなりませんか?
- A
確かに、MFAによるログインの手間などは増えます。しかし、それは「家の鍵をかける手間」と同じです。利便性とセキュリティはトレードオフの関係にありますが、今回ご紹介した5つの対策は、ビジネスを安全に継続するための「最低限のコスト」として、多くの企業で標準的に採用されているものです。
- Q社員が個人のスマホを業務に使う(BYOD)場合のリスク対策は?
- A
Microsoft Intune(Business Premiumなどに含まれる)を利用することで、個人のスマホ内にある「会社のデータ」だけを保護し、コピー&ペーストを禁止したり、紛失時に会社データのみを削除したりすることが可能です。
- QMicrosoft Defenderという名前をよく聞きますが、ウイルス対策ソフトは不要ですか?
- A
Windows 10/11に標準搭載されているMicrosoft Defender ウイルス対策は非常に高性能です。さらに、Microsoft 365 Business Premiumに含まれる「Microsoft Defender for Business」を導入すれば、PCだけでなくスマホも含めた高度なエンドポイント保護(EDR機能など)が可能となり、サードパーティ製のウイルス対策ソフトは不要になるケースが多いです。
- Qセキュリティ設定が正しくできているか、診断する方法はありますか?
- A
「Microsoft Secure Score(セキュア スコア)」という機能があります。Microsoft Defender ポータルで確認でき、テナントのセキュリティ状態を点数化し、「推奨されるアクション」をリストアップしてくれます。まずはこのスコアを上げること目標にするのも良いでしょう。
まとめ:「鍵」をかけるのは、あなた自身です

Microsoft 365は、世界最高レベルの堅牢なデータセンターで守られています。しかし、その入り口である「ID管理」や「共有設定」という鍵をかけるのは、導入した企業の責任です。
今回ご紹介した4つの対策は、明日からでも始められる基本的なものばかりです。まだ設定していない項目があれば、ぜひ早急に見直しを行い、安全なクラウド活用への第一歩を踏み出してください。
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今回はセキュリティという「守り」の側面に焦点を当てましたが、Microsoft 365には、日々の業務を効率化する「攻め」の活用法も無限に存在します。
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